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「SNNPRS」という産地呼称について知っておいてほしいこと


 

SNNPRSについて



エチオピアのコーヒー生産地の区分であったSNNPRSの表すロゴ
SNNPRSを表すロゴ 青、白、赤のストライプは平和、希望、闘争の歴史を示し、家はその中での文化的ルーツや共同体の一体感を象徴


「SNNPRS」という単語をご存知でしょうか?

コーヒー業界で働いている、スペシャリティ・コーヒーが好きな方なら目にされたことがあるかもしれません。

Southern Nations, Nationalities, and People's Region Stateの頭文字をとったSNNPRSは日本語で「南部諸民族州」を意味します。

50を超える民族が居住するエリアで構成されていましたが2019年11月、シダマ民族が最大であるシダマ州が分離、これに続き南西エチオピア諸民族州が分離したことを経て2023年にSNNPRS(南部諸民族州)は無くなって4つの異なる地域と州に分割されたのです。

現在ではSNNPRS(南部諸民族州)という区分は無くなってSouth Ethiopia Regional State(SERS)になりました。弊社の生豆販売の産地区分でもSERSに変わっております。

元々SNNPRS(南部諸民族州)に属していたYirgaceffeやOromia(Guji)がなくなるわけではないのですが今だに生産地の情報の中でSNNPRS(南部諸民族州)という名称を見かけます。

細かな変更に思われるかと思いますがトレーサビリティを重要視するスペシャリティ・コーヒーを扱われる方には知っておいて欲しく、ご案内させていただきました。


エチオピアのコーヒー産地を調べるのに便利な地図


SNNPRS(南部諸民族州)は下記に分割されました。
・South West Ethiopia Peoples' ・South Ethiopia Regional State ・Central Ethiopia Regional State ・Sidama

 

SNNPRSが無くなったのはなぜ?





以下は少し込み入った話です。 エチオピアの情勢に興味がある方はどうぞ。
1. 民族的多様性と自治要求
SNNPRS(南部諸民族州)は非常に多様な民族が共存している地域で、それぞれの民族グループは自身の言語や文化、伝統を重視しており、これが地方自治や独自の州を求める動きにつながりました。大きな民族グループは、政治的影響力を求め、中央集権的な体制に対して独自の権限を持ちたいと考えていました。

2. 民族国家連邦制の問題
エチオピアは民族国家連邦制を採用しており、各州は主に民族に基づいて構成されています。しかし、SNNPRS(南部諸民族州)のように多民族が混在する地域では、統一的な州としての運営が難しく、各民族が自分たちの州を設立したいという要求が強まりました。

3. シダマ州の成立
2019年にシダマ族は独自の州設立を求める住民投票を実施し、これが承認されました。シダマ州の成立はSNNPRS(南部諸民族州)の分裂の引き金となり、他の民族グループも同様に独自の州を求める動きを強めました。これをきっかけに南部の他の民族グループも次々に分離を目指す動きが見られ、2023年には南西エチオピア州やオモ州などの新たな州が誕生したのです。

4. 政治的不安定と中央政府の対応
エチオピア全体で見られる政治的不安定やアビィ・アハメド首相の改革に対する支持と反発もSNNPRS(南部諸民族州)の分裂に影響を与えたと考えられます。中央政府は地方の自治要求に対し、一部の要求を受け入れる一方で民族間の対立や暴力を抑制しようとしていますが、地域ごとの要求に対する対応は必ずしも一貫していません。

上記のような要因が重なりSNNPRS(南部諸民族州)は分裂し、複数の州に再編成されました。この分裂はエチオピアの民族間関係や自治問題を表しているのです。




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