ALO Berry(Underscreen)について世界一詳しく解説
- Dawit Woldetsadik
- 2024年9月13日
- 読了時間: 8分
更新日:3 日前
▼目次 (※2025/4/22 内容を一部アップデートしました)
Ethiopian Coffee Houseとの関係性 (※2025/4/22追記しました)
ALO Berry(Underscreen)とは?

ALO Berry(アロベリー)は、2021年にSidama(シダマ)という地域の中にあるBensa ALO village(ベンサ アロ村)で見つかったコーヒー豆です。
最も大きな特徴は名前の通りスクリーンサイズ(品種分けの基準となるその豆の最小サイズ)。
一般的なエチオピア産コーヒー豆のスクリーンサイズ14(5.5mm)を下回っているスクリーンサイズ12(4.5mm)であるにも関わらずエチオピアらしいベリー感を濃縮したようなフレーバーと非常に長い余韻を感じられます。
※Underscreen(アンダースクリーン)は、豆の基準最小値となるスクリーンサイズを下回る、サイズの小さな豆のことを指す一般的な名称です。
なぜスクリーンサイズが小さい?
スクリーンサイズが小さい豆自体は別に珍しい訳ではなく、Peaberry(ピーベリー)や、欠点豆である未成熟豆(Unripe beans)などがスクリーンサイズの小さいものとして存在しています。
ALO Berryもそうした既存の豆の一種なのでしょうか?
以下、仮説を立てて説明していきます。
①Peaberry(ピーベリー)説

Peaberryとは、チェリーの中に1つしか種子が入っていないものです。(通常は種子が2つ入っています。)ALO BerryはこのPeaBerryの種子と似ていたため、当初ALO BerryはPeaBerryの一種ではないかと考えられました。
しかしALO Berryに含まれるPeaBerryは10%以下であることが確認されたことから、ALO BerryはPeaberryの一種ではないこと(この仮説は正しくないこと)がわかりました。
②未成熟豆(Unripe beans)説

ALO Berryが発見されたばかりの頃は、その味が美味しいことはまだ知られていなかったため、単にサイズの小さい未成熟豆(Unripe beans)ではないかとも考えられました。
しかしALO Berryは明らかにフレーバーが良く(未成熟豆=完全に熟す前に収穫されてしまった、サイズの小さな豆 はフレーバーが良くない)、この説も正しくないことがわかりました。
こうしたさまざまな仮説のもと、ALO Berryは既存の豆に分類されるものではなく、もはや独自の品種ようなものとして考えられるようになりました。実際に飲んでみるとエチオピアらしいベリー感を濃縮したようなフレーバーと非常に長い余韻を感じられ、通常味が悪いとされるサイズの小さな豆とは全く異なる性質であることがわかっていました。
しかし上述の通り、当時は「一般的なサイズよりも小さい=未成熟である」と考えられていたため(判断され)、ALO BerryはCOE(カップオブエクセレンス)への出品を認められませんでした。
未成熟な豆が混ざってしまうと渋みや青臭さを出してしまい、コーヒーの味わいを損ねる原因となります。そんな恐れがある豆を提出することはCOEが始まって間もないエチオピアでは受け入れがたかったのかもしれません。
※別のスクリーンサイズが14以上の豆で、タミルさんは2021年に1位を獲得しています。
これらはYouTubeでダウィットとタミルさんのディスカッションもご覧になれます。
※会話はアムハラ語ですのでYouTube上の英語字幕を選択または自動翻訳をオンにしてご覧ください。
それではALO BerryのようなUnderscreenは、なぜサイズが小さいのに美味しいのでしょうか?
小さくても美味しい理由
Tamiruさんが運営するMurago villageにある農園と比較してみました。

比較ポイントは味わいを大きく決める以下の要素です。
・品種
・栽培方法
・環境
品種
ALOとMuragoで育てられている品種はどちらも74165であるにも関わらず、なぜかALOで育ったコーヒー豆はUnderscreenになり、Muragoで育ったものはスクリーンサイズが14以上だったのです。
これは74165が特別小さい品種ではないことを表しています。
(両農園に共通しているhigh floral intensityやlong after tasteは品種由来かもしれません)

栽培方法
肥料や剪定によっても果実の大きさは影響を受けます。
しかし、Tamiruさんに確認したところ肥料は使用しておらず、剪定にも差はないそう。
周辺に育つパイナップル、アボカド、バナナなどの農作物もほぼ同じようで、それらがスクリーンサイズに影響を与えた可能性は低いと思われました。
環境
最後に残ったのは育つ環境(標高)です。
高地では気温が低いため果実の成長速度が遅くなり、結果として果実が小さくなることがあります。また標高が高いと昼夜の寒暖差が大きくなり、果実の成長速度が遅くなることで、果実が小さくなることがあるようです。
これは標高2380-2480mに育つALO Berryに当てはまっています。
一方、Muragoを見ると2380-2470mとほぼ同じなのです・・・距離にすると数km程度しか離れていません。

これをTamiruさんに聞いたところそれぞれが育つ標高を平均するとALO Berryの方がMuragoよりも数十メートル高いことがわかりました。
少し前までは気温が低すぎて(標高が高すぎて)コーヒーが育たなかった両エリアですが、
地球温暖化の影響か育つようになったそうです。
このたった数十メートルの差(Microclimate)が美味しいunderscreenを産んだ?
Microclimate(微小気候)はスペシャルティコーヒーを扱う方なら一度は耳にしたことがあるはず。こちらは非常に限られたエリアに特有の大気条件を意味します。
標高が違えば温度(太陽光の当たり方)、湿度(雨の降り方)まで全く同じではありません。例えば日射量が少ない、気温が低いといったサイズが小さくなる要素が重なったことが、ALO村のコーヒー豆サイズに影響を与えたと考えられます。
つまり、これらのわずかな標高差による気候・環境の違いが、これまで一般的に「小さい豆=未成熟(美味しくない)」とされていた常識を覆すような、「小さいけれど高品質」なALO Berryを奇跡的に生み出したと私たちは結論づけています。
ALO Berryという名前について

上述の通り、SidamaのBensaにあるALOという土地で育ったからこそ、こんなにも素晴らしい風味を持っているとTamiruさんは「ALO Berry」という名前を付けました。
ALO Berryを使った焙煎大会開催を開催します!
今回、弊社主催のローストコンペ『AMBESSA JAPAN 2024』を開催する運びとなりました。
(大会についての紹介はこちらをご覧ください)
2024年9月から全国での予選が始まり、決勝戦は2024年10月@東京を予定しています。
※2025年も開催予定です。(2025/4/22追記)
大会開催にあたり、タミルさんからメッセージを頂きました。
皆さん、こんにちは。
エチオピアのアロコーヒーのタミルです。
友人のデイビッド(ダウィット)が主催する、私たちのコーヒーを使った焙煎大会に参加される皆さんにご挨拶を申し上げます。
大会の名前はAMBESSA JAPAN(アンベサ・ジャパン)で、AMBESSAの意味は「ライオン」です。
皆さんの関心とサポートに心から感謝いたします。
皆さんは、小さくて密度の高いコーヒー豆であるALO(アロ)のユニークなコーヒー(ALO Berry)を使って大会に参加します。
焙煎プロファイルは難しいかもしれませんが、創造性を発揮する絶好の機会です。
皆さんの焙煎技術に大きく期待しています。ぜひ頑張ってください!
また、10月のSCAJでお会いできるのを楽しみにしています。
会場でお会いしましょう!皆さんのことが大好きです!

Hello everyone, This is Tamiru from Alo Coffee in Ethiopia. I want to extend my greetings to all participants in the roasting competition featuring our coffee, organized by my friend David (Dawit). The competition is called AMBESSA JAPAN, which means "lion." I truly appreciate your interest and support. You will be competing using our unique coffee variety which is tiny and high-density coffee bean. While you may present a challenge roasting profiles, however a great opportunity for creativity. I have confidence in your skills as roasters. Good luck in the competition! I look forward to seeing you at SCAJ in October. Until then, goodbye! Love you!!
タミルさんと私たちのパートナーシップについて (2025/4/22追記)

ここからはおまけです。
タミルさんと弊社がパートナーシップを築いてきた過程をご紹介させてください。
彼との出会いは、彼が2021年のCup of Excellence(カップオブエクセレンス、以下COE)で1位と5位の同時入賞という快挙を達成したというニュースから始まりました。
その知らせを聞いた弊社代表のダウィットが、すぐに彼にコンタクトを取り、「ぜひ日本で紹介したい」と声をかけたのが最初の一歩でした。
当時、COEでは出品できる数量が限られていたため、5位に入賞した余剰在庫を弊社に販売してくれました。そのときに、「実はこんなサンプルもあるよ」と紹介してくれたのが、
「ALO Berry(Underscreen)」です。
その時はまだUnderscreenですらなく、"Tamiru Tadesse Special Selection"という形でご案内していました。そして、2021年9〜11月には「MEET TAMIRU」と題したオンラインセミナーを開催。コロナ禍ということもあり、画面越しでロースターの皆様へのご紹介となりました。
実は、ALO Berryを最初に日本へ持ってきたのは弊社なんです。
当時、豆のサイズが小さいという理由で国際市場だけでなく、エチオピア国内でも販売が難しかったそう。ですが「非常に小粒なのに、とても美味しい」というキャッチーさが話題になり、2021年のSCAJ前に完売。SCAJではテイスティングだけのご案内になってしまったのですが、大きな反響がありました。
それ以来、弊社は毎年タミルさんの農園を訪問し、タミルさんも継続して来日してくれています。
お互いにアテンドしあう関係になり、まさに「パートナー」と呼べる信頼関係を築いてきました。
2024年9月には初の自社主催ローストコンペティション「AMBESSA JAPAN」を開催し、本大会を通してALO Berryの価値をロースターの皆さまと再確認できた機会となりました。
そして2025年、タミルさんは昨年のAMBESSA JAPANファイナリストたちのために、特別なロットを提供してくれることに!
近いうちに、彼の手がける新しいコーヒーを日本の皆さまにご紹介できる予定です。
どうぞ、お楽しみに!
